Lou Reed / Berlin

このアルバムが発表されたのは、1973年の事。

デビッド・ボウイのプロデュースで作られた前作“トランスフォーマー”とは大きく異なり、感情の欠落を感じさせる。

この手の音はセルフ・プロデュースでほとんど一人で作ってしまわれる事が多い中、本作はプロデューサーにボブ・エズリンを、ゲストでキーボードにスティーヴ・ウィンウッド、ベースにジャック・プルース、ドラムにエインズレー・ダンバー、そしてギタリストにスティーヴ・ハンターとディック・ワグナーを迎え入れている。

内容が内容なだけに制作は困難を極め、エズリンは完成したアルバムを前にして「これは箱に入れて、箱ごとタンスにしまって、そのまま二度と聴かないのが一番だと思う」

とリードに語ったそうである。

悲しいけれども、涙はもう乾いてしまった・・・

そんな感じがするアルバムだ。

今までこのアルバムを何度聴いただろう。

自分の中では一番多く聴いているかもしれない。

もし自分が死んで葬儀を行うとしたら・・・

もしその時、音楽をかけるとしたら・・・

私はルー・リードのベルリンをかけて欲しい。

ベルリン

ベルリンの壁のそば

君の身長は5フィート10インチ

素晴らしい夜だった

キャンドルの明かりと氷を浮かべたデュボネ

僕らは小さなカフェにいた

君の耳にはギターの演奏が届いていた

とっても素敵だった

ああハニー、あれはパラダイスだった

レディ・デイ

通りを歩いて行く彼女は

子供のようにじっと足元を見つめてた

だがバーの前を通りかかった時

彼女は音楽の演奏を耳にした

彼女は入って行って歌わなければならなかった

それが彼女の定めだった

僕は言った、no,no,no

ああレディ・デイ

No,no,no

ああレディ・デイ

拍手が鳴り止むと

客は押し流されるように去って行った

彼女は高いバーのうえから這い降りると

ドアを出て行った

彼女が家と呼ぶ

ホテルに向かって

そこは壁が緑がかっていて

浴室は廊下にあった

No,no,no

ああレディ・デイ

No,no,no

ああレディ・デイ

富豪の息子

富豪の息子たちは

しばしば帝国を破滅させる

生い立ちの貧しい息子たちが

何もできないでいる内に

金持の息子は父親が死ぬのを待ち

貧乏人は酔っ払ってわめくだけ

そして僕はまったく関心がない

富豪の息子たちにも

何もできない奴はいる

一方生い立ちの貧しい息子たちにも

何かができる者はいる

彼らは心では男らしく振る舞っているつもりなのさ

自分では精一杯やってるんだ

彼らには頼りになる金持の父親はいない

富豪の息子たちは

しばしば帝国を破滅させる

生い立ちの貧しい息子たちが

何もできないでいる内に

金を作るには金が必要だと彼らは言う

フォードを見ろ

最初からああだった訳じゃない

僕にはどっちだって変わりはない

富豪の息子たちは

しばしば死にたいと願う

一方生い立ちの貧しい息子たちは

彼らの持っているものを欲しがり

それを手に入れるために死を賭けることもある

人生が与えてくれる素晴らしい宝物を得るために・・・

彼らは金が欲しい、そして生きたいのだ

だが僕にはまったく関心がない

富豪の息子たち

生い立ちの貧しい息子たち

キャロラインの話し Ⅰ

キャロラインは言う、僕はほんの遊びだと

彼女は男の子じゃなくて男が欲しいんだ

キャロラインは、キャロラインはそう言う

キャロラインは言う、自分は意地悪か

残酷にしかなれないと、そうかも知れない

キャロラインは言う、キャロラインは言う

甘える男は欲しくないと彼女は言うが

それでも彼女は僕のドイツの女王

そうさ僕の女王なのさ

彼女の行動や言動を

世間は他の女のように扱ってはならない

でも最初、僕はすべてを奪えると思ってた

ガラス瓶の中の毒のように

彼女は時々みだらになった

でも当然僕はすべてを受け入れられると思ってた

キャロラインは、僕は男じゃないと言う

だからその気になったら手に入れるだろう

キャロラインは言う、キャロラインは言う

キャロラインは言う

ずっと僕だけのものではいられないと

キャロラインは言う、キャロラインは言う

彼女は僕を馬鹿扱い

それでも僕にはドイツの女王

ああ、彼女は僕のクイーン

彼女は今も僕のクイーン

暗い感覚

どんな気分だと思う?

一人で突っ走ってる時には

どんな気分だと思う?

せめてもとしか言えない時には

わずかの愛でも持っていたら

せめてわずかでも変われたら

せめて、せめて、せめて

どんな気分だと思う?

いつになったら終わると思う?

どんな気分だと思う?

5日間も起きていたら

ずっと追い回ってた

眠るのが怖かったから

どんな気分だと思う?

狼と狐になった気分は

どんな気分だと思う?

いつも代理の恋人を演じているのは

どんな気分だと思う?

いつになったら終わると思う?

いつになったら終わると思う?

オー・ジム

ろくでもない友達に薬を盛られるぜ

体にいいから

病気が治るからなどと言って

そんなの俺は気にしない

俺は野良猫のようなもの

憎しみに満たされてここに来たんなら

素直になることが大切だと思わないかい

憎しみに満たされてここに来たんなら

あの女の顔に青アザを作ってやれ

Do,do,do,do,do,do

憎しみに満ちた瞳で見つめる時には

ろくでもない連中が

サインをねだる

お前をステージに上げた連中は

いい笑いものになると思っていたのさ

だが俺はそんなの気にしない

なぜってハニー、俺は野良猫のようなものだから

憎しみに満たされてここに来たんなら

素直になることが大切だと思わないかい

憎しみに満たされてここに来たんなら

あの女の顔に青アザを作ってやれ

Do,do,do,do,do,do

ああジム、どうしてこんな仕打ちをするんだい

なあ

どうしてこんな仕打ちをするんだい

ああジム、どうしてこんな仕打ちをするんだい

なあ

どうしてこんな仕打ちをするんだい

君が行ってから

僕はすっかり傷ついてしまった

僕らが好きだと言ってたが

君は一人を愛してるだけだった

ああジム、どうしてこんな仕打ちをするんだい

君が行ってから

僕はすっかり傷ついてしまった

そんなうらめしそうな目をして見るなよ

キャロラインの話し Ⅱ

キャロラインは言う-床から起き上がりながら

なぜ私をぶつの-そんなに面白いの?

キャロラインは言う-目の化粧を直しながら

あなたはもっと自分のことを学ぶべきよ

私だって考えてるんだから

彼女は死ぬのを恐れてはいない

友達は皆、彼女のことをアラスカと呼ぶ

彼女がスピードを飲むと

奴らは笑って尋ねるのさ

いま何を考えてる?

何を考えてるんだって

キャロラインは言う-床から立ち上がりながら

好きなだけぶてばいいわ

でももうあなたなんか嫌いよ

キャロラインは言う-唇を噛みしめながら

人生ってもっとステキなはずよ

-こんなのウソだわ

彼女は窓から拳を突き出した

とっても不思議な気分だった

アラスカはとっても寒い

子供たち

奴らは彼女の子供たちを連れて行った

彼女が良い母親じゃないと理由で

奴らは彼女の子供たちを連れて行った

姉と弟の間に

生まれた子供たちだったから

周囲の連中は皆

その辺に立って俺の目の前でいちゃついてる

卑しい警官みたいだった

奴らは彼女の子供たちを連れて行った

彼女が良い母親じゃないと理由で

奴らは彼女の子供たちを連れて行った

奴らは彼女の悪いウワサを聞いたんだ

空軍の黒人軍曹が最初じゃなかった

彼女はドラッグ漬けだと

みんながウワサした

俺は優柔不断な男だが

奴らの獲物はここにはない

だが気持がいっぱいで溢れそうだ

俺は疲れきってる、言葉さえない

だが娘を失ってからというもの

彼女の瞳は涙でいっぱいだ

俺にとってはこの方がしあわせだけど

奴らは彼女の子供たちを連れて行った

彼女が良い母親じゃないという理由で

奴らは彼女の子供たちを連れて行った

最初の恋人はパリからやって来た女だった

奴らは俺たちに一言も相談しなかった

今はインドからやって来た

ウェールズ人が一緒にいる

奴らは彼女の子供たちを連れて行った

彼女が良い母親じゃないという理由だけで

奴らは彼女の子供たちを連れて行った

彼女が通りや路地裏やバーで

やっていたことのために

だが彼女を責められはしない

落ちぶれた街の女は客を選べないんだから

ベッド

ここに彼女は頭を横たえていた

夜の眠りに就いた時には

そしてここで僕らの子供たちは生を受けた

キャンドルが夜の部屋を明るく照らしていた

そして彼女はここで手首を切った

以上で宿命的なあの夜

ああ、あの時の気分ときたら

ああ、あの時の気分ときたら

僕らはこの部屋に住んでいた

僕は愛と情熱を注ぎ込んだ

ここにある箱を

彼女は棚の上にしまっていて

その中には彼女の詞詩やなんかが一杯入っていた

この部屋で彼女はカミソリを手に取り

手首を切った、以上で宿命的なあの夜

ああ、あの時の気分ときたら

ああ、あの時の気分ときたら

悲しみの歌

アルバムを見つめていると

彼女はまるでスコットランドのメリー女王だ

じつに威厳がある

君の印象が間違ってることを教えてあげよう

ぼくはもう時間を無駄にすごすのをやめた

誰かが彼女の

両腕を折ってしまったんだ

子供と家庭が僕の城

彼女はスコットランドのマリー女王みたいだった

僕は苦労して

君の考えが間違ってることを教えようとした

僕はもう時間を無駄にすごすのをやめた

誰かが彼女の

両腕を折ってしまったんだ

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